本当の正式な納豆の食べ方、などというものを語る人がいて、その人によるとタレをかけてからかき混ぜるのは邪道であるらしい。かき混ぜてからタレをかけるのが正式であるというのだ。
しかし、私が調べた結果、これはガセであった。
このガセを、以前にテレビで言った人がいたらしく、そのせいで全国的にこの世迷いごとがそれなりに広まったらしいのだが、安心してほしい。繰り返すが、これはガセだ。これを信じる人は一生詐欺師のカモである。
そのガセの信者たちには、まず「納豆は糸が立てば立つほど美味しい」という説が前提として信仰されているのだが、それが先ず間違っている。実際には、味の印象のかなりの割合を、タレの味が決定づけている。タレというのは、まさに味をつけるために生まれてきた存在なのだから、当たり前だ。たとえ同じ納豆であっても、付属のタレをかけるのと家のテキトーな醤油をかけるのでは、味が全く違う。その実験を終えたのち、いつタレをかけるのかのタイミングを、同じ納豆・同じタレで試してみてほしい。そうすると、先ほどより味の変化の幅は圧倒的に少ないことが、誰でも容易に実感できる。
というわけで「納豆は糸が立てば立つほど美味しい」という説の嘘は、簡単に証明することができた。しかしガセの信者たちは、脳が赤黒く変色しているので、その嘘からさらに論理を展開する。「タレをかける前に納豆をかき混ぜた方が糸がたくさん立つ。だからその方が美味しい」とホザくのである。
しかし、タレをかける前にかき混ぜて糸をたくさん立てた納豆に、結局その後タレをかけると、いったい何が起こるのか。想像してほしい。そう、それは、タレという液体にによって糸が幾分か奪われた(タレをかけてからかき混ぜた納豆より糸が結局少ない)、しかも全体にタレが行き渡らない残念な納豆の完成である。
ここまでの話の内容はもはや自明と思っているのにもかかわらず、優しい心の持ち主で仏の異名さえ持つ私は、100回ほどの、やらなくてもいい比較の実験を行った。そして、その結果をここにいま高らかに宣言することとしよう。納豆はタレをかけてからかき混ぜた方がわたしは美味しい。
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